相続土地国庫帰属制度とは?まず結論

「使う予定のない土地を相続したが、管理の負担だけが重い」「売ろうにも買い手がつきそうにない」——そんな土地を、一定の条件のもとで国に引き渡せるのが「相続土地国庫帰属制度」です。

結論からお伝えすると、この制度は誰でも・どんな土地でも使えるわけではありません。建物がある土地や、担保権が設定された土地など、あらかじめ対象外とされる土地の条件が法律で定められています。また、審査手数料に加えて、10年分の管理費用相当額をまとめて納める「負担金」も必要です(法務省|相続土地国庫帰属制度の概要、2026年8月14日確認)。

30秒でわかるこの記事の結論

相続土地国庫帰属制度は、相続・遺贈で取得した土地を国に引き渡せる制度です。ただし建物がある土地などは対象外で、審査手数料(土地一筆14,000円)と負担金(原則20万円〜、面積等により変動)がかかります。

  • 対象は相続・遺贈で取得した土地(売買等で自分で取得した土地は対象外)
  • 建物がある土地は対象外。空き家がある場合は解体するか、売却(買取)を検討する必要がある
  • 審査手数料14,000円/筆+負担金原則20万円〜(10年分の管理費用相当額を一括納付)

本記事では、制度の仕組み・申請できる人・引き取ってもらえない土地の条件・費用・申請の流れを、法務省の一次情報に基づいて解説します。断りがない限り、本記事の内容は2026年8月時点の制度に基づいています。

制度の背景とポイント

相続土地国庫帰属制度は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)に基づく制度で、令和5年(2023年)4月27日に施行されました。土地の利用ニーズの低下により、相続したものの手放したいと考える所有者が増え、所有者不明化・管理不全化を防ぐ目的で創設された制度です(同資料)。

制度のポイントは、次のとおりです。

  • 相続・遺贈により土地の所有権を取得した人は、法務大臣に対して、その土地を国庫に帰属させることの承認を申請できる
  • 法務大臣は、必要があれば職員による調査(実地調査を含む)を行う
  • 承認申請された土地が「通常の管理・処分より多くの費用や労力がかかる土地」に該当しないと判断されれば、承認される
  • 承認を受けた人が負担金を納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属する

相続土地国庫帰属制度は、令和5年4月27日に施行された、相続・遺贈で取得した土地を国に引き渡せる制度です。承認・負担金納付を経て土地の所有権が国庫に移ります。

申請できる人

申請できるのは、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)によって土地の所有権や共有持分を取得した人です(同資料)。

  • 単独所有の土地:相続等により土地の全部または一部を取得した人が申請できる
  • 共有の土地:相続等により共有持分を取得した共有者が、共有者全員で共同して申請すれば利用できる
  • 売買など相続等以外の原因で共有持分を取得した共有者がいても、相続等により共有持分を取得した共有者がいる場合は、共有者全員での共同申請が可能
  • 制度開始(令和5年4月27日)より前に相続した土地も対象になる(数十年前に相続した土地でも対象)

一方、売買など相続等以外の原因で自ら土地を取得した人や、相続等により土地を取得することができない法人は、原則としてこの制度を利用できません。

相談者
数十年前に親から相続した土地なんですが、今からでもこの制度を使えますか?
福田
宅建士

はい、使えます。制度開始(令和5年4月27日)より前に相続した土地も対象になりますので、いつ相続したかは問われません。ただし、この後説明する「引き取ってもらえない土地の条件」に当てはまらないかどうかは、別途確認が必要です。

申請できるのは、相続・遺贈で土地を取得した人です。共有の場合は共有者全員での申請が必要で、制度開始前に相続した土地も対象になります。

引き取ってもらえない土地の条件

すべての土地が引き取ってもらえるわけではありません。法律上、「却下事由」(該当すれば直ちに申請できない土地)と「不承認事由」(個別に費用・労力の過分性が判断される土地)の2段階の要件があります(同資料、法務省|相続土地国庫帰属制度②③、2026年8月14日確認)。

申請の段階で却下される土地

  • 建物がある土地
  • 担保権(抵当権等)や使用収益権(賃借権等)が設定されている土地
  • 通路その他、他人の使用が予定される土地(墓地・境内地、現に通路・水道用地・用悪水路・ため池として使われている土地など)
  • 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地、所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地

審査の結果、不承認になる土地

  • 一定の勾配・高さ(勾配30度以上かつ高さ5メートル以上)の崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地
  • 土地の通常の管理・処分を阻害する工作物・車両・樹木等が地上にある土地
  • 除去しなければ通常の管理・処分ができない有体物が地下にある土地
  • 隣接地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理・処分ができない土地(通行妨害・使用収益妨害があるケースなど)
  • その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力を要する土地(土砂崩落等の災害防止措置が必要な土地、鳥獣・病害虫被害のおそれがある土地など)

建物がある土地・担保権が設定された土地などは申請段階で却下されます。崖地や争訟が必要な土地などは、審査で個別に不承認となることがあります。

空き家がある土地は使える?

引き取ってもらえない土地の条件の1番目にあるとおり、建物(空き家を含む)が残っている土地は、そのままでは相続土地国庫帰属制度を利用できません。 制度を使うには、あらかじめ空き家を解体して更地にしておく必要があります。

相談者
実家の土地を手放したいのですが、古い空き家が建ったままです。この制度は使えないということですか?
福田
宅建士

空き家が建ったままだと、この制度は利用できません。選択肢は主に2つです。1つは解体して更地にしてから申請する方法、もう1つは空き家付きのまま売却(買取)を検討する方法です。解体費用と負担金の合計と、買取によって得られる金額を比較して判断するとよいでしょう。

解体費用の相場や、解体せずに空き家を手放す方法(買取・空き家バンクなど)は、以下の記事で詳しく比較しています。

あわせて読みたい空き家処分の方法7選|費用と手間で徹底比較空き家を処分する7つの方法(売却・買取・賃貸活用・解体・空き家バンク・寄付・相続土地国庫帰属制度)を、費用と手間の面から比較します。2026年8月時点の一次情報に基づく内容です。

建物がある土地は却下事由に該当し、この制度は利用できません。解体して更地にするか、空き家付きのまま売却(買取)するかを比較して検討しましょう。

費用|審査手数料と負担金

制度の利用には、大きく分けて「審査手数料」と「負担金」の2種類の費用がかかります(法務省|相続土地国庫帰属制度の概要、2026年8月14日確認)。

審査手数料|土地一筆14,000円

審査手数料は、土地一筆あたり14,000円です。申請書に、審査手数料額に相当する収入印紙を貼って納付します。申請を取り下げた場合や、審査の結果却下・不承認となった場合でも、手数料は返還されません。

負担金|10年分の管理費用相当額

承認を受けた人は、土地の種目ごとに、その管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して算定した「負担金」を納付する必要があります。負担金の具体例は、次のとおりです。

土地の種類 負担金の目安
宅地・田畑・その他の土地(雑種地・原野等) 面積にかかわらず原則20万円
一部市街地の宅地(面積に応じて算定) 100㎡で約55万円/200㎡で約80万円
農用地区域等・一部市街地の田畑(面積に応じて算定) 500㎡で約72万円/1,000㎡で約110万円
森林(面積に応じて算定) 1,500㎡で約27万円/3,000㎡で約30万円
14,000円/筆審査手数料
(却下・不承認でも返還なし)

20万円〜負担金の目安
(宅地・田畑・その他)

なお、隣接する2筆以上の土地をまとめて申請する場合、法務大臣に申し出れば、面積を合算して1つの土地とみなして負担金を算定できる特例があります(例:市街化区域外の宅地100㎡×2筆を別々に申請すると20万円×2=40万円だが、合算すれば200㎡×1として20万円で済む)。

審査手数料は土地一筆14,000円、負担金は宅地・田畑・その他の土地で原則20万円が目安です。市街地の宅地・農地は面積に応じて増額されます。

申請の流れ

申請は、次の流れで進みます(同資料)。

  • ①相談・申請:帰属の承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門に、窓口または郵送で申請書を提出する(支局・出張所では受付不可)
  • ②法務大臣(法務局)による要件審査・承認:必要に応じて実地調査が行われる。国有財産の管理担当部局や地方公共団体への照会も行われる
  • ③負担金の納付:承認を受けた人が、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する
  • ④国庫帰属:負担金の納付をもって、土地の所有権が国庫に帰属する

申請書には、土地の位置・範囲を示す図面、隣接地との境界点を示す写真、土地の形状を示す写真、申請者の印鑑証明書が、全申請者に共通して必要です。遺贈によって土地を取得した場合や、登記名義人と申請者が異なる場合は、戸籍謄本や遺産分割協議書など追加の書類が必要になります。

なお、申請後、審査が完了するまでの間に申請者が亡くなった場合は、相続等があった日から60日以内に申請先の法務局へ申出をすることで、手続きを継続できます。

申請は土地所在地の法務局本局へ。審査・承認を経て負担金を納付した時点で国庫に帰属します。審査中に申請者が死亡した場合は60日以内の申出で手続きを継続できます。

空き家買取.comの買取査定について

本サイト「空き家買取.com」は、株式会社Triikuが運営しており、空き家・相続物件の直接買取を専門に行っています。

  • 宅地建物取引業免許番号:東京都知事(01)第111976号
  • 所在地:〒105-0003 東京都港区西新橋2丁目39番3号 SVAX西新橋ビル4F
  • 電話番号:03-6845-0996(受付時間 10:00〜19:00、年中無休)

株式会社Triiku 公式サイト|会社概要、2026年8月14日確認)

「相続した土地に空き家が残っていて、解体費用と負担金を合わせるとかなりの出費になりそう」という場合は、空き家付きのままでの買取査定もあわせてご検討ください。

よくある質問

Q1. 相続土地国庫帰属制度の負担金は、10年後にまた払う必要がありますか?

いいえ。負担金は、土地の管理に要する「10年分の標準的な費用」を考慮してあらかじめ算定した金額を、承認後に一括で納付する仕組みです。本記事の一次資料の範囲では、10年ごとに追加の負担金が必要になるという記載はありません。

Q2. 相続土地国庫帰属制度のデメリットは何ですか?

主なデメリットは、①建物がある土地・担保権が設定された土地など、引き取ってもらえない土地の条件が細かく定められていること、②審査手数料(14,000円/筆)に加えて負担金(原則20万円〜)がかかること、③申請から承認までに実地調査等を含む審査期間が必要なことです。

Q3. 相続土地国庫帰属制度の申請は誰に相談すればよいですか?

まずは、土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)に相談できます。申請書類の作成を専門家に依頼したい場合は、司法書士・行政書士・弁護士等に相談する方法もあります。

Q4. 相続してから何年以内に申請しなければなりませんか?

申請期限はありません。制度開始(令和5年4月27日)より前に相続した土地も対象になるため、数十年前に相続した土地でも申請できます。

Q5. 相続土地国庫帰属制度が使えない場合、どうすればよいですか?

建物がある土地であれば解体して更地にすることで申請できる可能性があります。それでも崖地や権利関係の問題などで条件を満たせない場合は、売却(買取)や、そのまま所有を続けて管理する等の選択肢を検討することになります。相続した空き家・土地の選択肢全体は、以下の記事もあわせてご覧ください。

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Q6. 費用はいくらかかりますか?

審査手数料が土地一筆あたり14,000円、負担金が土地の種類・面積に応じて原則20万円〜です。市街地の宅地や農用地区域等の田畑は、面積に応じてさらに高くなります。

まとめ|使える土地かどうかをまず確認しよう

この記事の要点

  • 申請できるのは相続・遺贈で土地を取得した人のみ(制度開始前の相続も対象)
  • 建物がある土地は対象外。却下事由・不承認事由に該当する土地は利用できない
  • 費用は審査手数料14,000円/筆+負担金原則20万円〜(10年分の管理費用相当額の一括納付)

相続土地国庫帰属制度は、使う予定のない土地を手放す有力な選択肢のひとつですが、建物がある土地は対象外になるなど、誰でもすぐに使える制度ではありません。まずは自分の土地が却下事由・不承認事由に該当しないかを確認し、該当する場合は解体や売却など別の方法とあわせて検討することが大切です。

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